『タピオカ屋はどこへ行ったのか?』 菅原由一が描くブームの光と影

はじめに
菅原由一氏の著書『タピオカ屋はどこへ行ったのか?』は、日本で一世を風靡したタピオカ
ブームの興隆と衰退を追いながら、その背景にある経済的・社会的な要因を分析した一冊で
す。タピオカという一見シンプルな飲み物が、どのようにして巨大なビジネスへと成長し、そ
して短期間で衰退していったのか。その舞台裏には、SNSの影響や消費者心理、さらには国
際的な経済変動までもが絡み合っていました。
本書は単なる流行の記録ではなく、「なぜブームは生まれ、なぜ終焉を迎えるのか?」という
普遍的なテーマに迫る内容となっており、タピオカに興味がある人はもちろん、マーケティ
ングや社会のトレンドに関心がある人にとっても非常に示唆に富んだ一冊です。
それでは、本書の内容とともに、実際に読んで感じたことを詳しく紹介していきます。
著者:菅原由一 出版社:KADOKAWA
本書の概要
『タピオカ屋はどこへ行ったのか?』は、大きく以下のような構成で展開されます。
- タピオカブームの起源
- タピオカが台湾でどのように生まれ、世界的に広がっていったのか。
- 日本における第一次・第二次タピオカブームの違い。
- 急成長の理由
- SNSとインフルエンサーの影響。
- 「映える」文化がいかにタピオカブームを加速させたのか。
- フランチャイズビジネスとしての成功。
- ブームのピークとその裏側
- タピオカ屋が急増しすぎたことで起こった問題。
- 競争激化による価格破壊と品質低下。
- コロナ禍の影響で急速に縮小。
- タピオカ屋の消滅とその教訓
- なぜ多くの店舗が閉店したのか。
- 他のブームと比較したときの違い。
- 短期間で消えるビジネスの特徴。
感想:タピオカブームの「熱」と「冷め」
1. タピオカが社会現象になった背景がよく分かる
本書の冒頭では、タピオカが単なるドリンクではなく、「文化」や「ライフスタイル」として
受け入れられた過程が詳しく描かれています。特に印象的だったのは、以下のポイントです。
- 「タピる」という言葉の誕生
かつては「スタバる」などの言葉が流行しましたが、タピオカブームでは「タピる」という表現が若者の間で定着しました。これは、タピオカドリンクが単なる飲み物ではなく、「友達と楽しむイベント」として認識されていたことを示しています。 - SNSとマーケティングの力
かつての流行はテレビや雑誌が主導していましたが、タピオカブームはInstagramやTikTokなどのSNSが火付け役となりました。「映える」写真を撮るために、わざわざ並んででもタピオカを買うという行動は、まさに現代の消費スタイルを象徴していると感じました。
2. 急成長の裏にあるビジネスの功罪
本書では、タピオカ屋が次々と開店し、急激に市場が膨張していく様子が詳細に語られてい
ます。しかし、ブームの裏側では、次のような問題も浮かび上がっていました。
- フランチャイズの急増とその弊害
一部の企業は、タピオカブームをビジネスチャンスと捉え、急速にフランチャイズ展開を進めました。しかし、その結果として質の低い店も増え、タピオカドリンクの品質にバラつきが出てしまいました。読んでいて、「ブームに乗っかっただけの店が増えすぎたのが問題だったのでは?」と改めて感じました。 - 価格競争と原価高騰
需要が急増すると、当然ながら原材料費も高騰します。特にタピオカの原料であるキャッサバ粉は輸入品のため、為替の影響を受けやすいという点も興味深かったです。また、競争が激化する中で、無理に価格を下げた結果、利益を確保できずに撤退する店舗も増えたとのこと。タピオカ屋の栄枯盛衰は、「急成長ビジネスのリスク」を象徴していると感じました。
3. ブームの終焉と消費者心理
本書の後半では、タピオカ屋が急速に減少していく理由が詳しく解説されています。その中で
特に納得したのは、「人はブームに飽きる」というシンプルな事実です。
- 「次の新しいもの」を求める心理
どんなに人気のあるものでも、人は常に新しい刺激を求めます。本書では、パンケーキブームやナタデココブームとの比較がされており、タピオカも「流行のサイクル」の中で消費されてしまったことがよく分かりました。 - コロナ禍の影響
コロナ禍による外出自粛で、「みんなで飲むタピオカ」の楽しみが失われたことも大きな要因だったとのこと。これは単なる経済の問題ではなく、「タピオカ文化」が崩れたことがブーム終焉につながったのだと感じました。
まとめ:タピオカブームが教えてくれること
『タピオカ屋はどこへ行ったのか?』は、一つのブームの誕生から終焉までを追いながら、
「流行とは何か?」という問いに向き合う一冊でした。読後に感じたポイントをまとめる
と、以下の3点に集約されます。
- 流行はSNSによって爆発的に広がるが、同じ速度で消えていく
- ビジネスの急成長にはリスクが伴い、持続的な発展には慎重な戦略が必要
- 消費者心理の変化を常に読み取り、ブーム後の戦略を考えておくことが重要
タピオカブームを懐かしく思う人も、ビジネス視点で流行を考えたい人も、人手不足やサー
ビスはどうするのか、正社員を雇うのではなく外注化するか、固定費をどう削減するかなど
経営やビジネスについて本書は多くの気づきを与えてくれるはずです。流行の本質を学びたい
方に、ぜひおすすめしたい一冊でした!





