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本の感想

稲盛和夫『心。』──人としてどう生きるかを問う一冊

shiro_kitsune

はじめに:経営の神様が最後に伝えたかったこと

「心を高める、経営を伸ばす」

この言葉に聞き覚えがある人も多いのではないでしょうか。日本を代表する経営者であり、

「京セラ」や「KDDI」を創業し、JAL(日本航空)の再建にも携わった稲盛和夫氏。

彼が一貫して大切にしてきたのは「経営の技術」ではなく、「人間として正しいことを貫く心」でした。

稲盛氏が晩年に書いたこの著書『心。』は、まさにその“心”の核心に迫る一冊です。

経営書というよりも、生き方の指南書、哲学書、あるいは人生の羅針盤のような存在。

この記事では、『心。』を読んで私が受け取ったメッセージや感動、そしてそれをどう日常に

活かしていけるかを、わかりやすくお伝えしていきます。


「心が人生を決める」という原点

本書の冒頭で稲盛氏は、「人間の一生は心の持ち方で決まる」と断言します。

成功者としての彼がたどり着いたこの言葉は、経験からにじみ出る深みがあります。

実際、彼の人生は決して順風満帆ではありませんでした。

戦後の混乱期に学生時代を過ごし、就職先にも恵まれず、技術者として地道な研究を続けなが

ら、独立して京セラを創業。

周囲の期待も資金もない中で、ただ「誠実に生きる」「利他の心で仕事に向き合う」ことを信

念として貫いてきました。

心が変われば、態度が変わる。

態度が変われば、習慣が変わる。

習慣が変われば、運命が変わる。

稲盛氏の考える「心」は、単なる感情ではなく、人生そのものを左右する「源」なのです。


利他の心で生きるということ

『心。』の中でも特に印象的なのが、「利他」という言葉の繰り返しです。

利他とは、他人のために尽くすこと。自分の利益よりも相手の幸せを優先するという価値観です。

一見すると自己犠牲のように思えるかもしれませんが、稲盛氏の語る利他はもっと深い。

彼は、「人間は本来、他人の幸せを願える存在であり、そのように生きることで心が清くな

り、自然と幸運が引き寄せられる」と語ります。

そして、自身の会社経営でもこの精神を徹底し、従業員や取引先、お客様の幸せを第一に考

えて行動してきました。

「会社は誰のものか?」という問いに対し、稲盛氏は「全社員のもの」と答えます。

この考え方は、今のビジネス社会においても非常に先進的です。

株主第一主義とは一線を画す、まさに“心の資本主義”とも呼べる哲学です。


「動機善なりや、私心なかりしか」

本書で何度も登場するフレーズに、

「動機善なりや、私心なかりしか」

書籍:『心。』
著者:稲盛和夫
出版社:サンマーク出版

があります。

これは稲盛氏があらゆる判断や行動の基準にしてきた問いで、「その行動の動機は善である

か? 私利私欲はないか?」という意味です。

会社経営においても、個人の生き方においても、この問いを自分に投げかけることで、自ら

の在り方を律してきたのです。

この言葉を自分の日常に取り入れてみると、不思議と心が静まり、何が本当に大切かを見極

めることができます。

たとえば仕事で判断を迫られたとき、あるいは人間関係で迷ったとき、ぜひこの問いを自分

に向けてみてください。


苦難の中で「心を磨く」

稲盛氏の人生は決して順調なものではありませんでした。

創業時の苦労や、会社の危機、JAL再建のプレッシャーなど、数々の困難に直面してきました。

しかし、彼はそれらの困難を「心を磨く機会」として捉えてきました。

「人間として成長するには、苦難を避けて通ることはできない。むしろ、苦しみの中にこそ、魂を鍛える真実がある」

書籍:『心。』
著者:稲盛和夫
出版社:サンマーク出版

この考え方は、仏教の「煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい)」にも通じるものがあります。

現代社会ではできるだけ苦しみを避ける風潮がありますが、稲盛氏は真逆を行きます。

むしろ、苦しみと正面から向き合い、それを「心の養分」として取り込むことで、人は本当

に成長できると説いているのです。


現代における「心」の重要性

今の時代、テクノロジーは目覚ましい進歩を遂げています。

AIやIoT、ビッグデータなど、私たちはこれまでにない便利さとスピードを手に入れました。

しかし、その一方で「心」は置き去りにされつつあるようにも感じます。

SNSでの誹謗中傷、利益優先の企業倫理の崩壊、孤独感に悩む人々──。

そうした現代においてこそ、稲盛和夫氏の『心。』は強烈なメッセージを放っています。

物質的な豊かさを追い求めるあまり、心の豊かさを失っていないか?

そんな問いを、私たちはこの本から突きつけられているのです。


おわりに:自分の「心」と向き合う時間を持とう

『心。』を読み終えたとき、私は思いました。

「自分は、どんな心で生きているだろう?」

これは、非常に根源的で、かつ難しい問いです。

しかし、その問いから逃げず、日々少しずつでも心を磨いていくことで、自分の人生は確実に

変わっていくと感じました。

稲盛和夫氏はもうこの世にはいませんが、その「心」は、この一冊を通して私たちに語りかけてくれます。

そして、どんな職業であれ、どんな境遇にあっても、人は“心”次第で幸せになれることを教えてくれます。

最後に、本書の中で最も心に残った一節を引用して、この記事を締めくくりたいと思います。

「心を高め、運命を変える。すべては、自分の心のありようにかかっている」

書籍:『心。』
著者:稲盛和夫
出版社:サンマーク出版

迷いや不安の多い現代だからこそ、多くの人に読んでほしい一冊です。

自己啓発本のように即効性を求める本ではありませんが、人生をじっくり見つめ直したい方

には深い示唆を与えてくれるでしょう。


参考文献:

書籍:『心。』

著者:稲盛和夫

出版社:サンマーク出版

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しろきつね
しろきつね
ブロガー / 会社員
会社員として働くだけではリスクが大きすぎると思い、2024年にブログを開始。本が大好きで本好きの方と繋がりたい! 人生の目標は毎日ワクワク心が踊る日々を送ること。 そして静かな街で犬と猫に囲まれてのんびり平穏な日々を過ごしたい。
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