ようやくカナダに行きまして|「逃げてもいい」と思えた瞬間が、人生を動かした
「環境を変えたい」「このままでいいのだろうか」
そう思いながらも、日常に流されてしまう——そんな経験は誰にでもあるはずです。
『ようやくカナダに行きまして』は、芸人・エッセイストとして長年活躍してきた光浦靖子さんが、50歳を目前にしてカナダ留学を決断し、その過程と心の揺れを正直に綴った一冊です。
この本が多くの読者の心を打つ理由は、「成功談」でも「キラキラした海外生活」でもないから。
むしろ、不安・劣等感・孤独・年齢への焦りといった、誰もが抱えがちな感情が、驚くほどそのままの温度で書かれています。
この記事では、本書の魅力を説明しています。
この本は「挑戦の物語」ではない
まず最初に伝えたいのは、この本はよくある
「思い切って海外に行ったら人生が変わった!」
というタイプの自己啓発本ではありません。
光浦さん自身、カナダに行く決断をした時点で、
- 語学力に自信があるわけでもない
- 将来の明確なビジョンがあったわけでもない
- 「成功する確信」などまったくない
そんな状態でした。
それでも動いた理由は、とてもシンプルです。
「このまま同じ場所に居続けるほうが、しんどい」
この感覚に覚えがある人は、少なくないのではないでしょうか。
年齢・肩書・実績が、一度すべてリセットされる場所
カナダでの生活は、決して快適ではありません。
語学学校では、年下のクラスメイトに囲まれ、
芸人としての実績も、日本での知名度も、まったく通用しない。
そこにあるのは、
- うまく話せない自分
- 気の利いたことが言えない自分
- 役に立たない自分
そんな「丸裸の自分」です。
しかし本書が面白いのは、
その状況を無理にポジティブに変換しないところ。
「できないものは、できない」
「恥ずかしいものは、恥ずかしい」
「飾らない言葉が続くので、読んでいるうちに自然と気持ちが軽くなっていきます。」
「逃げた」と言われてもいい、という選択
世の中には、「逃げる=悪」という価値観が根強くあります。
仕事を辞める
環境を変える
今までの人間関係から距離を置く
それらはしばしば「負け」「甘え」と評価されがちです。
ですが本書を読んでいると、こう感じます。
逃げることと、自分を守ることは、必ずしも同じではない
光浦さんは、無理に日本で踏ん張り続けることを選びませんでした。
代わりに、自分が呼吸しやすい場所を探した。
それは決して派手な決断ではありません。
けれど、とても誠実で、勇気のある選択です。
完璧じゃないから、共感できる
このエッセイには、
- 劇的な成長
- 華やかな成功
- 人生が一変するような出来事
は、ほとんど出てきません。
むしろ描かれているのは、
- 小さな失敗
- 気まずい沈黙
- どうでもいいことで落ち込む自分
そうした「日常のリアル」です。
だからこそ読者は、
「これは特別な人の話じゃない」と感じることができます。
「人生は何度でもやり直せる」は、綺麗事じゃなかった
よく言われる言葉に、
「人生は何度でもやり直せる」
というものがあります。
正直、どこか胡散臭く聞こえることもありますよね。
ですが本書を読んで感じたのは、
やり直しとは「劇的な再スタート」ではない、ということ。
- 知らない街で生活してみる
- 知らない言語に触れてみる
- 知らない自分を許してみる
その小さな一歩の積み重ねが、
結果として「やり直し」になっているのです。
こんな人におすすめしたい一冊
この本は、特に次のような人に強く刺さると思います。
- 今の生活に、言葉にできない違和感がある人
- 年齢を理由に、新しい挑戦を諦めかけている人
- 「このままでいいのか」と夜に考えてしまう人
- 頑張り続けることに、少し疲れてしまった人
「何かを決断させられるわけじゃなく、『こういう生き方も悪くないな』と自然に思えてきます。」
読後に残った、いちばん大きな学び
読み終えて強く残ったのは、次の感覚でした。
人生を変えるのに、立派な理由はいらない
「やりたいから」
「しんどいから」
「今じゃない気がするから」
それだけで、動いてもいい。
この本は、
「頑張れ」とも
「挑戦しろ」とも
言ってきません。
ただそっと、
「あなたの選択は、あなたが決めていい」
と伝えてくれます。
まとめ|そっと寄り添ってくれるようなエッセイ
『ようやくカナダに行きまして』は、
人生を劇的に変えるノウハウ本ではありません。
けれど、
- 心が疲れたとき
- 立ち止まってしまったとき
- 自分の人生を考え直したいとき
また読み返したくなる一冊です。
「決して派手じゃないのに、不思議と心に残るそんな本です。」
そんな本を探している人に、
ぜひ手に取ってほしいエッセイです。
📘 書籍情報:『ようやくカナダに行きまして』
タイトル
ようやくカナダに行きまして
著者
光浦 靖子(みつうら やすこ)
出版社
文藝春秋(ぶんげいしゅんじゅう)
発売日
2024年9月26日頃(初版)
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